美学生インタビューInterview
「傷つける怖さ」から一歩踏み出して 実習での出会いが導いてくれたアナウンサーという夢
同志社大学の社会学部社会福祉学科に進学した理由を教えてください。
中学生の頃、子ども食堂のボランティアに参加したことがきっかけです。
2018年に起きた西日本豪雨で出身地・広島が被災した際、「自分も何かできないか」と考えて、祖父母と一緒に現地で支援活動に参加したんです。その後、「地元でもできることを」と思い、踏み出したのが子ども食堂でのボランティアでした。
正直、最初は子ども食堂って“子どもたちが食事をするための場所”だと思っていました。ですが、実際は違っていて、子どもたちはもちろん、保護者の方やボランティアにとっても居場所になるくらい、“気持ちを大切にしている場所”だったんです。
そこから福祉に興味を持ち、この学科への進学を決めました。そして、在学中に将来の夢を見つけることができたんですよ。
どんな夢ですか?
アナウンサーです!そもそも子ども食堂のボランティアを知ったのが、NHKの『ハートネットTV』だったこともあり、“見逃されそうな思いや現場のリアルに光を当てられる”アナウンサーというお仕事にずっと関心はありました。
この関心が夢に変わったのが、1回生の時の実習でした。視覚障がいのある方がいらっしゃる施設で、ある20代の男性と出会ったんです。その方は先天性の視覚障がいをお持ちでした。レクリエーションの時間に話しかけようとした私は、「言葉で傷ついてしまうんじゃないか」と怖くなり、何も話せませんでした。
ですが、その後、もう一度チャンスがあったので、今度は“目が見えない”ということを考えず、いつもと同じように話してみたんです。大好きなK-POPの話をしたところ、偶然その方もお好きで、「このアイドル可愛いよね」「この曲がいいんだよね」と話してくださいました。
怖さにとらわれて距離を置くのではなく、相手と向き合う勇気を選んだんですね。
はい。この経験から「可愛い」という感覚はひとつじゃないんだと気づきました。私のようにビジュアルから“可愛い”を感じることも、その方のように音楽や雰囲気から“可愛い”を感じることもできるからです。この違いに触れて、自分が勝手に壁を作っていたことをとても後悔しました。障がいのあるなしに関係なく、誰とでも同じ目線で向き合えばよかったんです。
こうした自身の学びや出会った方の思いを誰かに届けられるお仕事がしたい、それができるのがアナウンサーなのではと思い、本気で目指すことを決めました。
少しでも夢に近づきたくて、2回生の時には、兵庫県のテレビ局「サンテレビ」で番組アシスタント等を務めるユニット「第54期サンテレビガールズ」の活動も始めたんですよ。
サンテレビガールズを経てアナウンサーに内定!現在は社会福祉士の資格にも挑戦中
サンテレビガールズにはどうして応募したんですか?
兵庫県内のさまざまな場所や企業を取材し、現場の声を拾うリポーターのお仕事ができるところに惹かれました。地元で頑張っている人たちや職人さんの思いや誇りに触れながら、自分が魅力的だと思ったことを伝えられる、とても素敵なお仕事だと思ったんです!
誰かの思いを受け止めて届ける、松永さんらしい挑戦ですね!倍率が高そうですが、受かる自信はありましたか?
もちろんないですし、とにかく怖かったです。「アナウンサーに絶対になるんだ!」という思いがある一方で、なれなかったときのことを考えてしまい、周りにも夢を話せていなかったので……。
ですが、これまで出会った方の頑張る姿や思いを届けたいという気持ちが背中を押してくれました。合格した後は「もう逃げられん!」と覚悟を決めて、プロフィールの将来の夢の欄に「アナウンサー」と書きましたね。
実際に活動してみて、特に心に残っている出来事はありますか?
県北部の塩山地区で毎年おこなわれている収穫祭を取材したことです。
この日はロケ地に小さな子どもたちがたくさんいて、空き時間は一緒に鬼ごっこをして遊んでいました。すると、ディレクターさんまで入ってくれて、ずっと走り回っていたんです(笑)その間、カメラさんや音声さんは親御さんと一緒にカレーを食べていました。
普段はカメラを向けると固くなってしまう方が多いのですが、この日は違いました。本番でも、私が直接目にした町の良さや住民の方の温かさがそのまま伝わっている気がしたんです。「カメラが回っていない時間に作り上げた空気がいい番組に繋がるんだ」と勉強になりました。
ただ情報を伝えるだけではなく、その場所や人の素敵さを届けようとする姿勢が素敵です!松永さんは現在4回生とのことですが、就活はどうでしたか?
地方局のアナウンサー職で内定を頂きました。私自身、とても思い入れのある放送局なので嬉しいです。
おめでとうございます!どんな思い入れですか?
この局のアナウンサーの方のラジオが大好きなんです。中でも印象的だったのが「人の悪口は言わないようにしよう」という言葉について語られていた回でした。
その方いわく、「嫌だな」と思ったことを家族の前で吐き出すなど、誰かを傷つけることがなく、それでみんなが幸せならば少しくらい言ったっていいじゃないか、と。「俺だって悪口言うし」という等身大のトーンでお話しされていて、それがすごく心に響きました。綺麗事ではなく、本当に私たちと向き合ってくれている感じがしたんです。「そういう方がいらっしゃる局で働きたい」と思っていたので、ご縁を頂けて本当に嬉しいです。
東京と大阪のアナウンサースクールに通い、正直「もう同じことはできない」と思うくらい就活はしんどかったですが、頑張って本当によかったです!
アナウンサーとして活躍する姿を見るのが今から楽しみです。今後の目標はありますか?
実は今、社会福祉士の資格取得に向けて勉強しています。これはソーシャルワーカーと呼ばれる、病院や行政、児童相談所などで社会的養護を必要とする方を支えるお仕事です。
福祉の分野では人手不足が大きな問題になっています。私が社会福祉士について学び、現場に光を当てられたら、この分野がもっと温かく明るいものに見えるかなと思ったんです。夢見ていた、“見逃されそうな思いや現場のリアルに光を当てられる”アナウンサーになれるように、常に等身大で歩み、視聴者に一番近い存在として信頼される人を目指して頑張ります!
美学生プロフィールProfile
担当カメラマン・インタビュアーCameraman & Interviewer

