美学生インタビューInterview
正解が決まっていないからこそ面白い!“評価のものさし”を塗り替えるバレエを目指して
同志社大学スポーツ健康科学部に進学した理由を教えてください。
怪我をしない身体づくりについて学びたかったからです。
私は高校生の時、クラシックバレエの練習をしすぎて足を痛めたことがあります。足首のあたりにある「三角骨」という小さな骨が親指の腱に当たっていたみたいで、つま先を伸ばすたびに骨と腱がこすれ合い、傷ついた腱が切れかけてしまいました。最終的には手術で骨を取り除いたのですが、その後は歩くことすらできず、復帰にはかなり時間がかかりました。
その時、「怪我を繰り返さない身体を作りたい」と思ったんです。あとは体型管理のために栄養面の知識もしっかり学びたいと考えていたこともあって、この学部を選びました。
バレエにとても熱心に取り組んでいるんですね!
はい!人生の分岐点には全部バレエが関係しています。
始めたきっかけは何だったんですか?
幼稚園の課外活動で、バレエ教室の先生がレッスンをしてくださったことです。音楽に合わせて踊るのが楽しくて、すぐに教室へ通い始めました。
長く頑張り続けていてすごいです……!
ありがとうございます!でも、本気で打ち込むようになったのは小学6年生からなんです。バレエ教室の移籍がきっかけでした。
もともと所属していた教室は小学5年生で一旦卒業となり、その後は別のクラスに進む仕組みでした。ただ、その教室は趣味みたいな雰囲気だったので、「このまま続けていていいのかな?」と考えるようになったんです。
そこでいくつかの教室を見ていくうちに、もっと上のレベルがあることを知りました。今までは、教室内で主役に選ばれることを目標に練習していましたが、他の教室ではコンクール出場のために、さらに高いレベルを目指して取り組んでいたんです。
それを見て「自分も本気でバレエに打ち込んでみたい」と思い、日本で一番とされるバレエ団の元トップダンサーの方が新たに始められた教室への移籍を決めました。
教室のレベルの高さが伝わってきます。
同世代の子たちは、私よりも早くから努力を重ねていて向上心も高く、すでに上手でした。最初は練習についていくのもやっと、という感じでした。当時は平日は4時間、土日は8時間ほど踊っていましたね。
ストイックですね!自分だけが遅れていた悔しさが、頑張るモチベーションになったんですか?
もちろんそれもありますが、やっぱり一番は「バレエが大好き!」という気持ちです。
バレエって舞台芸術なので、他のスポーツと違って評価基準が明確にされていないんです。例えば、同じ踊りでも見る人によって感じ方が変わるし、多く回転したときよりも少ない回転数で綺麗に回ったときの方が高く評価されることもあります。審査員によって、技術を重視する人もいれば、身体のラインや美しさを見る人もいる。そこが面白いんです!
客観的な評価基準がないってことですね。人の感覚ひとつで結果が変わるなんて、私なら正直もやもやしそうです。
確かに持って生まれたもので審査されているように感じることもあります。でも、だからこそ面白いなって思うんです。基準が決まっていないから、それを自分で越えていくことができる。自分の持っている能力や表現で、どれだけ審査員を驚かせられるか、感じ方を変えられるか……。そういう挑戦が楽しいんです!
バレエって、自分にとっての美しさを突き詰めるものだと思っていました。そうではなく、“相手にどう伝えられるか”が大切なんですね。
はい。バレエは“自分が楽しい”だけではだめなんです。私はそれに中学2年のコンクールで気づきました。
「いつもと違う」と言われた日から――心構えが変わったあの舞台を、7年越しにもう一度
詳しく聞きたいです!そもそもコンクールってどんなことをするんですか?
自分で選んだ曲で1~3分ほどのソロを踊って審査を受けます。
コンクールには毎回おばあちゃんが見に来てくれて、終わった後に感想をくれます。いつもは「可愛かった」「楽しそうだった」といった言葉が多いのですが、中学2年のコンクールだけは「いつもと違う!すごく良かった」と言ってもらえたんです。
その時に選んだのは、『眠れる森の美女 第三幕』のオーロラ姫の踊りでした。お姫様の踊りなのでコンクールという抜粋した一部であっても、他の踊り以上にオーラが必要だと思ったんです。でも、それが自分にとって難しく大きな挑戦で……。悩んだ末にいつもと違うアプローチをとりました。
どんなアプローチですか?
先生に指摘されていない部分も自分で考えながら練習したんです。少しでも美しく見せられるように、角度やつま先の柔軟性など、細かい部分にまでこだわりました。お姫様らしい表現にするために、プロの方の踊りを分析しながら自分なりに研究を重ねたんです。
その甲斐あって、おばあちゃんから「いつもと違う」と言ってもらえたんだと思います。自分の変化に気づいてもらえたのはもちろん、伝えようとしたことがちゃんと伝わった実感があって、とても嬉しかったです。この経験が自分の中の意識を大きく変えました。
それまでは“楽しく踊ろう”という気持ちが強かったのですが、以降は、“どう伝えられるか”を意識して踊るようになったんです。その延長で、バレエの指導にも関わらせていただいています。
指導もしているんですね!
大学の教授に「競技の向上を図るには、人を客観的に見て、指導して、自分の言葉で伝えることが大事だ」と言われたんです。それを聞いて「自分をさらにレベルアップできるかもしれない」と思いました。
どのような役割を務めているんですか?
先生のアシスタントをしていて、小学1〜3年生と4〜6年生のクラスを担当させていただいています。
バレエは「人間の身体ってそこまで開くの?」と思うくらい足を開いて踊るので、先生の言葉を理解するのが難しい場面があるんです。そういうときは、大学で学んでいる機能解剖学の知識を活かして「どの筋肉をどう動かすか」を理論的に説明しています。
私自身、大学で学ぶ前は先生の言葉をうまく理解できないことが多かったので、その経験が今に結びついているなと感じます。
本当にバレエ一色の人生なんですね。辞めたくなったことはないんですか?
はい、一度もありません。やっぱりバレエは面白いので!言葉を使わずに喜怒哀楽を伝えられるのは、バレエならではの魅力だと思います。私の踊りでそれを感じてもらいたいですし、身体全部を使ってバレエの世界観に引き込むような踊りをするのが目標なんです!
最後に、今後の目標について教えてください!
今は6月にある発表会に向けて練習しています。
出演者は70人ほどいるのですが、その中で第三幕の主役を任せていただけることになりました。しかも題目は、中学2年のコンクールと同じ『眠れる森の美女』なんです。当時は一部だけでしたが、今回はダイジェスト版で“グラン・パ・ド・ドゥ”といわれる、男女の主役によって展開される見せ場を踊ります。7年経った今だからこそできる表現で、成長した姿を見ていただけたらと思っています。
美学生プロフィールProfile
担当カメラマン・インタビュアーCameraman & Interviewer

